ずっと生き難かった。ため息と深呼吸の備忘録。


by 草子
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蔵屋敷あづまさ




喜多方の街を歩いていたら、
たまたま見つけた、漆の資料館の看板。

ふらっと入る。


展示物やショップを軽く見せてもらい、
帰りかけたところ、
目にはいった火棚が漆塗りだったから大変。

よくよく見れば、玄関の床は竹を打ってあるし、
只者ではなさそうな畳が敷いてある。



食堂でなにも注文しないくせに
床や畳や火棚を、眺めたり撫でたりしていたら、
おじさんがニコニコしながら寄ってきた。

素材や見えない部分の構造まで、教えてくれる。
喜ぶと、もっと教えてくれる。
もっと喜ぶと、通常は立ち入り禁止エリアへ案内してくれる。

おじさんの自慢の、7間半もある立派な梁。
蔵屋敷あづまさ_c0145183_1174713.jpg

小宴会用の座敷になっているようなので、
こづゆやにしん山椒漬けなど
会津の伝統的な料理といったものを食べられるのかを訊ねると、
笑いながら、ここは高い、と他人事みたいに言う。
蔵屋敷あづまさ_c0145183_1182989.jpg


薄暗がりのなかで、
高級そうな畳に正座して、長いこと話を聞かせてもらう。



そうして、お礼を言って出ようとすると、
このさきのどこそこの梁を見るといいよ、と教えてくれる。
それでは行ってみます、と返事をして、いよいよ庭を出るまで、
おじさん、わざわざ見送ってくれる。



ここでやっと、この建物がなにか、分った。
福島県でいちばんの大米穀商だった松崎家の住まいと蔵。
蔵屋敷あづまさ_c0145183_1184044.jpg

とすると、おじさんは、現在の当主!?
雇われた店主や館長ではなかったのか。考えが及ばなかった。



失礼なことを、わたしは言わなかっただろうか。
言わなかったとは思うけど、
今度また会うことがあったら、もっと丁寧にお礼を述べよう。


土が踏み固まった細い路は、夏の日ざかりで、白く見えていた。


後ろから自転車の音。
よけながら振り返ると、おじさんだった。
どこそこへは突きあたったら右ね、と穏やかに言う。

結局、おじさんは、黙って、
突きあたりのまん前まで、ゆるゆると自転車を漕いでくれた。
そしてまた、右ね、と微笑む。
はい、右ですね、もう大丈夫です
と言うと、おじさんは静かに左へ自転車を向けた。


おじさんの後姿に、直角くらいのおじぎをして、
からだを起こすと
もう、おじさんも自転車も、見えなくなっていた。

Commented by masayankinuyo at 2012-07-27 17:33
喜多方の街・・・バイクで抜けてしまって見て廻れなかったのが
今、思うと残念です。
街並み蔵屋敷とかあっていいですよね~><
やっぱりゆっくり見て廻りたかったです(ρ_;)
今度是非!
Commented by ekoekolove at 2012-07-27 17:50
これを読んで、草子さんって案内されるひとだな
と思ったんだけど
そう書こうと思ったら↑のが更新されてて
びっくりしたけど納得した。

草子さんが歩けば人間家宝に当たるんだな。
それも道理だよね、おばあちゃまの話を考えると
血なんじゃないかと。

ちょっと前に書きこんだやつ
方丈記へのオマージュだと思い込んでたんだけど
違ってたらごめーん。

一節目しか一緒じゃないじゃんねorz
Commented by green-field-souko at 2012-07-29 21:54
■hidekinuさま そうそう、ツーリングのライダーさんたちも多かったよ。
喜多方には、まだまだ、古道具がしまわれていますね。
よいものはたしかにそれ相当のお値段だけれども、わたしのように
チープに古道具を楽しみたいひとには、掘り出し物が多いかも。
はい。今度、ぜひ!^^
Commented by green-field-souko at 2012-07-29 22:04
■あやちんさま 案内されるひと、かあ。うん、そうなのかもね。
だとしたら、ありがたいよねえ。思わず知らずのうちに、
だれかになにかをやっていただけるんだから、不思議な気もするし。

ごめん。方丈記って、よく知らないんだ...orz
検索してみたw
「ゆく川の流れは絶えることがなく、しかもその水は前に見たもとの水ではない」
とあって。これって、ジュール・ルナールと同じこと言ってるじゃ~ん。と。
ルナールが後発だけどさw ルナールは方丈記を知っていたのかな?
by green-field-souko | 2012-07-26 23:14 | 旅と隠遁 | Comments(4)