ずっと生き難かった。ため息と深呼吸の備忘録。


by 草子
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蕗と筍



昔、うちの裏庭には竹やぶが、あった。
60年に一度、咲くといわれる花が咲いて、竹が枯れてしまうまで、
毎年、春に伸びてくる筍を掘って惣菜をこしらえるのが楽しみだった。

あれは、孟宗竹だったか。
飽きるほど筍を食べもしたが、
太い根元を、祖父や父はナタで叩き伐り、田畑で使う細い棒をとったものだった。

大きく振りあげたナタで、2、3度、打たれると、
竹の空洞はポンと乾いた音を立てて、あっけなく折れてしまう。
それから枝葉を払う音が、タツタツと小気味よかった。

採り残した筍は一夜で、みずみずしい青竹の姿になる。

梅雨が明けるころには、手頃の竹を伐ってもらい、子どもたちは七夕飾りを吊るした。

昭和39年の新潟地震のとき、曾祖母は竹やぶへ逃げたという。
根を網のように地表に広げるために、竹やぶの中は地割れしないとされていたので。

あるときにはなにも思わなかったのに、
なくなってみると、消えた竹やぶ分の虚(うろ)に呼ばれる気がする。




蕗のひとむらは、今も、庭の隅にある。
蕗と筍_c0145183_15411088.jpg

根元に小鎌を当て、クッと引くと、サックリ採れる。
大鍋で色よく茹でた蕗の皮を、冷たい水のなかでスーッと引くのが面白かった。

曾祖母や母の家事炊事を、よく手伝う子どもだった。
手伝うことが、傍に居ることだった。
ほめられようと、見様見真似に熱心だった。
蕗と筍_c0145183_15404690.jpg



半日陰の場所を、蕗は好む。
涼しく湿った蕗の陰に、蛇がよく身を隠している。
人間を察知すると、蛇は、陰から陰へ、スルスルと流れるようにして消えた。

美しかった蛇の模様や遭遇した驚きを、蕗の皮を引きながら話すと、
「シマヘビは毒がないから大丈夫」
「居なくなるまで、そっとしてあげるのよ」と、母は言った。

シマヘビは今も、蕗のあたりで、小さなのを見かける。



蕗と筍の煮物。
いそいそと母は、仏壇に供えた。

蕗と筍_c0145183_15475497.jpg

Commented at 2013-05-29 19:12
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2013-05-29 19:13
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by green-field-souko at 2013-05-29 19:51
■2013-05-29 19:12の鍵コメさま こんにちは~^^
うーん…残念ながら、今のところLINEは、やっていないのですよ。
わたしのスマホはauなので、無料にはなりそうにないですね…。

基本的に、当ブログのコメント欄にお願いするのがよさそうと思います。
でも、後ほど、ご連絡させていただきますね^^
Commented by green-field-souko at 2013-05-29 20:03
■213-05-29 19:13の鍵コメさま
エキサイトは、そういうのは、はじかないみたいですよ。経験から。
それでは、とりあえず、アプローチをば。よろしくです。
Commented by myurinm at 2013-05-30 23:07
こんばんは。
蕗も筍も大好きです。
シンプルに煮物にすると美味しいですよね~。
↓間引き菜まつり・・・いいですね(^O^)/
旦那は間引き菜の塩揉みが好きです。
スーパーで間引き菜を買ったりする時もありますよ(笑)
Commented by green-field-souko at 2013-05-31 07:40
■みゅリンさま こんばんは。
結局、うちでは葉っぱものを、間引きながら食べているので、
完成品みたいな野菜は、あるような、ないような、なんです。
早採りはもったいないみたいでも、早くからどんどん採っていかないと、
最後に余ってしまいます。
友達も農家に嫁いだりしていますので、進呈する先もあまりなく、さりとて
自分が手をかけたと思えば、なるべく廃棄はしたくなくて。
こうしたジレンマは、ド田舎のあちこちにあるのだろうと思います。
Commented by Silvergray777jp at 2013-05-31 15:07
 こんにちは。 フキの葉を洗って、大きいのを半分に切って、それを適当に短冊に切ります。 焦げ付いても落としやすい鍋に全部入れ、出しの素(白だし可)としょうゆと酒、鷹の爪を入れて、焦がさないように煮詰めます。 佃煮なんです。 かき混ぜ続けるのがコツです。 大きかった葉っぱが縮んでよれよれになって、焦げる寸前になるとサラサラの乾いた佃煮になります。 これ、美味ですよ。 ほとんどどんなおかずにでも、ご飯にでも合うので、ちょっとつまむと口のなかがピリッとして、いい感じの苦味が味わえます。 それと、腐りません。 真夏でも常温で大丈夫です。 お試しあれ。
Commented by green-field-souko at 2013-05-31 18:33
■Silverさま こんにちは。
わお♪ 白だし、醤油、酒、鷹の爪、ちょうど全部あります。
もちろん蕗の葉も畑にワサワサと。

作り方を読みながら、サラサラに乾くまで煎った蕗の葉が、想像されました。
手塩皿にでも、ちょいと盛ったら、お酒のおともにもよさそうですね。
それに、真夏でも腐らないのは、これから始まる「現場弁当」に助かります。

週末に雨が降ったらつくってみます。
雨の夜にキッチンに居るの、好きなんです。落ちつけて。
レシピを、ありがとうございます^^
Commented by rollingwest at 2013-06-01 08:04
うまそうな筍~!竹の花は60年に一度でしたか!小さいころ、竹の花が咲くと大きな天災が起きるなどと聞いて咲かないでほしいと願っていたものです。
昭和39年新潟地震の当日の記憶は今も鮮明に残っています。柏崎の浜は津波に襲われるぞ~と2階の屋根に避難していましたが結局波が来ることなくホッとしたものです。
Commented at 2013-06-01 20:53
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by green-field-souko at 2013-06-02 07:57
■RWさま なぜか、阿賀野市は、竹林が多いんです。
まあ、里山があるからなんでしょうけど、筍を採らないと竹林が傷むので
あるおじさんなどは「勝手に蹴り倒して持ってってくれ」と言っていました。
竹の花は、稲の花に似ていました。よく憶えています。幻想的な風景でした。

新潟地震の記憶があるのですか。津波がこなくて、よかったですね^^
Commented by green-field-souko at 2013-06-02 08:14
■2013-06-01 20:53の鍵コメさま
朝早くからで、すみません。メールさせていただきました。
あら~、けっこう齢くっていますよ、わたし。ふふふ。
by green-field-souko | 2013-05-29 15:52 | そうるふうど | Comments(12)