ずっと生き難かった。ため息と深呼吸の備忘録。


by 草子
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

名前のない牛



昔むかしの牛が言う。



2歳で農家へやってきた。

鋤で田を耕したり、
山から薪を背負ってきたり、
毎日毎日、難儀な仕事をさせられた。

とくに難儀な仕事をさせるとき、
飼い主の若者は、
力が出るようにと屑米を煮てくれた。
脚が腫れれば、湯と塩で懸命に揉み、治してくれた。
獣医に診せる余裕がないなりに
可愛がってくれた。と。







牛が8歳になると博労がやってきて、
若い牛との入れ替えを勧めた。
使役を終えた牛は太らせ、
肉牛として送り出されることになっていた。
貧しい農家では、牛の最期を看取れなかった。

博労に連れていかれる日。
引かれながら牛は
大粒の涙をポロポロとこぼした。
牛はかしこい。
自分の運命を知っている。

何頭もの牛を、生涯のなかで若者は飼った。
飼えば可愛がったが、
名前をつけることは一度もなかった。
皆、そうしていた。




昨日、聞いた、名前のない牛の話。
わたしの胸は今朝になっても
ずうっと、
牛の哀しみが詰まったように、苦しい。

仕方のない話でも、忘れないで、残してほしい。
と牛が言う。
牛の哀しみが被さってくるので、
わたしは苦しくてつらいのだけど、
こういうことは
今生での、
わたしの役目なのかもしれない。



にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 半ひきこもりへ
にほんブログ村
by green-field-souko | 2016-09-17 09:17 | 日々の照り降り