ずっと生き難かった。ため息と深呼吸の備忘録。


by 草子
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モノの名前

きのう、資料さがしに出たついでに、別冊「現代農業」という本を見つけた。こういう本があったとは知らなかった。よく見ていなかったらしい。
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トウガラシやニンニクを風通しよく保存する、ワラによる編みこみ方が、図解で説明してあった。ジャムや乾物のレシピだけなら買わなかったけど、図解に魅かれて買ってしまった。
モノの名前_c0145183_1027213.jpg


うちのとーちゃんは、玉かけという技術の資格を持っている。引越しの荷造りなんかも上手い。ダンボール箱などにロープがしっかりと掛かり、ほどよい緩みがあって持ちやすく、簡単にほどけないくせに、コツがわかればロープを切断しないでもスルリとほどけ、ロープを再利用できる。
資格なんてもっていなくても、昔のひとは、生活のなかで、いろんなことができたのだろうと思う。知恵をめぐらせ、草木を編むなどして、収納道具や運搬道具をこしらえたりとか。その意匠はまた、じつに美しいものが多い。

何年かまえ、郷土史料館の立ち上げ作業を、手伝ったことがある。そっちのほうはまったく知識がなかったので、見るもの聞くものみんなめずらしく、面白いように頭に入ってきた。別冊「現代農業」のページをめくりながら、そんなことを思い出した。
漁具。網の長さや水深は、尋(ひろ)で測る。尺寸よりまえからあった単位らしい。ひとが拡げた両手の先から先まで、およそ180センチが一尋(ひとひろ)。畳なんかの住宅寸法の基準と同じ、日本のヒューマンモジュール。もちろん現在は、公的には使われないのだけれど、現地では平成に使われていた。尋はひっそりと生きていた。必要だから生きているのだな、と思った。

トウガラシやニンニクなどをワラで編みこむことや、形状を変えて道具となったワラにも、名前があったのではないだろうか。

考古学とか、国文学とか、専門の勉強をしたことがないから、わからないけど。
時代の淘汰のなかでモノがなくなると、モノの名前がなくなる。そうすると名詞が減り、漢字が消え、語彙が失われ、言語表現は単調で貧しくなっていくのだろうと思う。それは、生活の本質が、物質経済の豊かさに反して貧しくなっていくのと、同じ気がする。

Commented by koto01011 at 2009-01-29 10:47
おもしろい本があるんですね(^^)
旅行に行って、古い農機具とか土間を見るのが結構好きです。
今からここに住みなさいって言われたら寒がりの私は絶対無理だけど
そういう生活に心を飛ばすのが好きです。
言葉と言えば私は古い地名がなくなって、全国どこでも同じ中央区とか言ってるのが理解できないんですよね~。
古くからの地名はそれは、それなりに意味があるのになぁ~
日本人は何か大切な物を忘れていってる気がします・・・。
Commented by green-field-souko at 2009-01-29 16:21
■ことえさま 史料館の仕事で苦労した点は、キテレツなかたちの道具の
氏素性を洗い出すことでした。農具はまだしも、漁具や醸造用具については、
これはいったいなにする道具?…と(笑)
以来、古いものが好きになった気がします。日用雑器好きもこのころからかな。
昔の地名は美しかったですよねえ。同感です。
Commented by Junko at 2009-01-29 18:57 x
Ciao 草子さん
私もこういった昔の人たちの生活の中で培った言い回しや技が好きです。
こうさ、心がポット暖かくなる。
残念ながら、どんどんなくなっていくけどね。こういう者たち
残念なことです。
なんとか守れないものかしらね、、日本の伝統は私たちの根っ子なのに。
Commented by green-field-souko at 2009-01-30 07:42
■Junkoさま ある程度、年齢を重ねたり、異文化にふれたりすると、
日本という根っこを考えたりするのかもしれませんね。
そちらも、古く素敵な建物が消えて行っているそうですが、スクラップ&
ビルドはもうやめてくれ~、よね^^
こちらは、薄っぺらな分譲マンションが、過剰建設でだぶついているわ。
Commented by rabi8a at 2009-01-31 08:20
数え方、ってありますよね。
脚、客、棹、膳...
椅子や食器や箪笥というものに対する意識が変わって
単なるモノになってしまうと、何でもいっこ、にこと
一からげにされてしまうのでしょう。
Commented by green-field-souko at 2009-01-31 09:45
■うさきちさま うん。うさぎが羽という理由、みたいなことが
言葉の元なのではないかと思ったりもします。
by green-field-souko | 2009-01-29 10:39 | 畑でわたしは考える | Comments(6)